1. 人口減少社会における不動産投資への誤解と真実
総人口の減少が直ちに賃貸需要の消滅を意味しない理由
「日本の人口は減り続けている。だから不動産投資は危険だ」 メディアやSNSで繰り返し語られるこの論調は、一見すると論理的に正しいように思えます。確かに、日本の総人口は減少局面にあり、地方の過疎地では空き家問題が深刻化しています。しかし、このマクロな事実をそのまま「都心のワンルームマンション投資」に当てはめてしまうのは、あまりに解像度が低い判断と言わざるをえません。
不動産投資、特に都市部の賃貸経営において重要なのは「総人口」ではなく、「そのエリアに住みたいと考える人の数」です。日本全体で人口が減っていても、特定の都市やエリアでは人口が増え続けている、あるいは横ばいを維持している場所が存在します。水が高いところから低いところへ流れるように、人もまた、仕事や利便性、文化的な刺激を求めて特定の場所に集まる性質があります。
総人口の減少をもって「すべての不動産需要がなくなる」と結論づけるのは、「日本人の平均年齢が上がっているから、若者向けのファッションブランドはすべて倒産する」と言うようなものです。市場全体が縮小しても、局所的に成長・維持されるセグメントは必ず存在します。それが、不動産投資においては「大都市圏」であり、居住形態においては「単身向け住宅」なのです。
注目すべきは「人口」ではなく「世帯数」の推移
不動産投資の成否を分ける指標として、プロが最も重視するのは人口よりも「世帯数」の推移です。なぜなら、住宅は「1人1つ」借りるわけではなく、「1世帯に1つ」必要となるからです。
例えば、4人家族が1つの戸建てに住んでいる場合、人口は4人でも必要な住宅は1戸です。しかし、子供たちが独立して一人暮らしを始め、夫婦が熟年離婚をして別々に暮らすようになれば、人口は4人のままでも必要な住宅は3戸、あるいは4戸に増えます。これが「世帯細分化」と呼ばれる現象です。
近年の統計を見ても、総人口が減少に転じた後も、世帯数は増加傾向を維持しています。特に顕著なのが「単独世帯(一人暮らし)」の増加です。未婚率の上昇、晩婚化、そして高齢者の単身化。これらが複合的に作用し、日本の世帯構造は劇的に変化しました。かつての「標準世帯(夫婦と子供)」はもはや多数派ではありません。この構造変化こそが、ワンルームマンション投資の需要を底支えしている最大の要因です。
投資対象としての「ワンルーム」が持つ独自の安定性
ファミリー向け物件や戸建て投資と比較した際、ワンルームマンションは市況の変化に対して極めて強い耐性を持っています。
まず、賃借人の属性です。ワンルームの入居者は主に、学生、新社会人、単身赴任者、そして独身の会社員です。彼らは就学や就労のために都市部に住む必要性があり、景気が悪化したからといって実家に帰るという選択肢を容易には取れません。リーマンショックやコロナ禍といった過去の経済危機においても、都心ワンルームの入居率は驚くほど安定していました。
また、広さが限られている分、賃料単価(坪単価)を高く設定しやすい一方で、グロスの賃料(支払総額)は相場内に収まるため、入居者にとって「支払い可能な範囲」に留まります。例えば、都心でファミリータイプを借りようとすれば家賃20万円〜30万円は下りませんが、ワンルームであれば8万円〜11万円程度で、利便性の高いエリアに住むことができます。この「手の届く家賃設定」が、空室リスクを低減させる安全弁となっています。
本記事で解説する需要予測のロードマップ
本記事では、2026年時点での市場環境を踏まえ、なぜ今後もワンルームマンション投資が有効な選択肢となり得るのか、その構造的な理由を徹底的に分解します。
単なる楽観論ではなく、人口動態データ、都市計画の規制、建築コストの推移といったファクトに基づき、10年後、20年後の未来を予測します。これから不動産投資を始めようとする方が、感情や雰囲気に流されることなく、数字と論理に基づいた投資判断を下すための材料を提供します。
2. データで読み解く「単身世帯」の爆発的増加トレンド
国勢調査が示す単身世帯比率の右肩上がりの実態
最新の国勢調査および国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口を見ると、日本の「ソロ社会化」は留まるところを知りません。特筆すべきは、全世帯に占める単独世帯の割合です。すでに全国平均でも単独世帯が最も多い世帯類型となっていますが、大都市圏においてはその傾向がさらに顕著です。
2020年代に入り、東京都区部では単身世帯の割合が50%を超えているエリアが珍しくなくなりました。つまり、2軒に1軒は一人暮らしという状況です。これは一過性のブームではなく、社会構造の不可逆的な変化です。かつてのように「結婚して家庭を持つことが当たり前」という社会規範が薄れ、個人のライフスタイルが尊重されるようになった結果、一人暮らしを選択する層が厚みを増しています。
核家族化の先にある「単独世帯」主役の時代
昭和の高度経済成長期には、地方から都市へ労働力が移動し、核家族化が進みました。そして令和の現在、その核家族すら解体され、個々人が独立して住まう「単独世帯」が主役の時代へと移行しています。
この変化は、賃貸市場における「必要な部屋のサイズ」を変えました。かつては3LDKや2DKが主流でしたが、現在は1Kや1LDKの需要が圧倒的です。特に都市部では、広い家を持て余すよりも、コンパクトで機能的な住まいを好む傾向が強まっています。掃除の手間が少なく、光熱費も抑えられ、駅からの距離を優先できるワンルームマンションは、現代の単身者にとって最も合理的な居住形態と言えるでしょう。
2040年問題:高齢者単身世帯の急増と賃貸ニーズ
将来予測において見逃せないのが、高齢者の単身化です。いわゆる団塊ジュニア世代が高齢期を迎える2040年頃には、高齢単身世帯が激増すると予測されています。
従来、高齢者は持ち家に住むものと考えられてきましたが、生涯未婚率の上昇や、持ち家を売却して利便性の高い都心へ移り住む動きにより、賃貸住宅を求める高齢者が増えています。かつては「高齢者は孤独死リスクがあるから貸さない」という大家も多かったのですが、見守りサービスの進化や保証会社の充実により、そのハードルは下がりつつあります。
投資家目線で見れば、高齢者は一度入居すると転居が少なく、極めて長期にわたって家賃を払い続けてくれる優良な顧客になり得ます。ワンルームマンション需要は、若者だけでなく、シニア層によっても支えられる構造へと変化しています。
東京都および主要都市における単身世帯数の将来推計
東京都の推計では、総人口がピークアウトした後も、単独世帯数は2030年代半ばまで増加し続けると予測されています。さらに、その後も急激に減少するのではなく、高止まりする見込みです。
大阪市や名古屋市、福岡市といった政令指定都市でも同様の傾向が見られます。地方の過疎地では人口減と世帯減が同時に進行しますが、都市部では「人口微減・世帯微増」または「人口横ばい・世帯増」というフェーズが長く続きます。不動産投資は20年、30年というスパンで行うものですが、少なくとも今後四半世紀において、主要都市の単身用住宅需要が崩壊するシナリオは、データを見る限り極めて考えにくいと言えます。
3. 未婚化・晩婚化が加速させる「賃貸派」の定着
「生涯未婚率」の上昇が不動産市場に与えるインパクト
50歳時の未婚割合を示す「生涯未婚率」は、男性で約3割、女性でも約2割に達する勢いで上昇を続けています。これは、不動産市場にとって何を意味するでしょうか。
結婚して家族を持てば、多くの人は広さを求めて郊外に戸建てやファミリーマンションを購入します。つまり、賃貸市場から卒業していきます。しかし、未婚のまま過ごす人が増えれば、彼らは賃貸市場に留まり続けます。あるいは、購入するとしてもコンパクトな都心マンションを選びます。
生涯未婚層は、可処分所得が比較的多く、住環境へのこだわりも強い傾向にあります。「寝に帰るだけ」の質素なアパートではなく、セキュリティが充実し、デザイン性の高い分譲仕様のワンルームマンションを選ぶ有力な顧客層となっているのです。
晩婚化現象によるワンルーム居住期間(LTV)の長期化
結婚するとしても、その時期は年々遅くなっています。初婚年齢の上昇は、独身期間の延長を意味します。 例えば、22歳で就職して25歳で結婚する場合、ワンルームに住む期間は3年です。しかし、35歳で結婚する場合、その期間は13年に及びます。
不動産経営において、顧客1人あたりの生涯価値(LTV: Life Time Value)は重要です。晩婚化によって、1人の入居者がワンルーム市場に滞留する期間が数倍に伸びていることは、空室リスクを埋める大きな要因です。入居者の回転率は不動産投資のコスト要因ですが、晩婚化は「長く住んでくれる単身者」を増やし、経営の安定化に寄与しています。
離婚率の推移と「単身戻り」需要の顕在化
現代において無視できないのが、離婚による「単身戻り」の需要です。3組に1組が離婚すると言われる昨今、一度ファミリー世帯になった人が、再び単身世帯に戻るケースが増えています。
離婚直後の住まいとして、初期費用が抑えられ、すぐに生活を始められる賃貸ワンルームは選ばれやすい選択肢です。特に男性の場合、財産分与などで資金に余裕がないケースもあり、まずは手頃なワンルームから再出発するというパターンが多く見られます。人生の多様化、家族のあり方の流動化は、結果として小規模住宅の需要を多層的に支えています。
「持ち家離れ」とサブスクリプション型ライフスタイルの浸透
若い世代を中心に、「所有」に対する価値観が変化しています。音楽や動画、車さえもサブスクリプション(定額利用)で済ませる世代にとって、数千万円の借金を背負って家を買うことは、必ずしも合理的な選択とは映りません。
「ライフステージに合わせて住まいを変えたい」「転勤や転職のリスクに備えて身軽でいたい」と考える層は、あえて賃貸を選択します。彼らにとって家賃は「捨て金」ではなく、「自由を維持するためのコスト」です。このように積極的に賃貸を選ぶ層が増えていることは、投資用マンションのオーナーにとって追い風となります。
4. なぜ人は都市を目指すのか?止まらない人口集中のメカニズム
東京圏への転入超過が続く構造的な要因
政府は長年、東京一極集中の是正を掲げてきましたが、東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)への転入超過は依然として続いています。コロナ禍で一時的に郊外への流出が見られましたが、経済活動の再開とともに再び都心への回帰が進みました。
この背景には、産業構造の変化があります。製造業中心の経済から、情報通信・サービス業・金融といった知識集約型産業へのシフトが進む中で、情報は「人」が集まる場所にこそ集積します。高付加価値な仕事は都市部に集中し、それを求める人材もまた都市に集まる。このサイクルは強力であり、地方創生のスローガンだけで逆転させることは困難です。
地方大学の都心回帰と若年層の流入サイクル
かつて郊外に移転した大学キャンパスが、再び都心に戻ってくる動きが活発化しています。「都心キャンパス」は学生募集における強力な武器となるからです。大学が都心にあれば、学生もその周辺や通学に便利な沿線に住みます。
地方の高校を卒業した若者が、大学進学や就職を機に上京し、ワンルームマンションの入居者となる。この「若年層の流入サイクル」というポンプ機能が働いている限り、東京および主要都市の賃貸需要は枯渇しません。少子化で若者の絶対数は減っていますが、大学進学率の上昇と都心集中により、都市部の学生数は底堅く推移しています。
インフラ・医療・商業施設の集積が生む「都市の磁力」
都市の魅力は仕事だけではありません。高度な医療機関、多様な商業施設、エンターテインメント、そして発達した公共交通機関。これらが徒歩や短時間の電車移動で完結する環境は、高齢化社会においてこそ価値を持ちます。
車の運転が難しくなった高齢者にとって、地方の車社会での生活は困難を伴います。一方で、都市部であれば公共交通機関と徒歩で生活が成り立ちます。「都市の磁力」は若者だけでなく、全世代を惹きつけるインフラの集積によって生み出されています。不動産価値は、突き詰めれば「その土地が持つ利便性の総和」です。都市部の土地には、莫大な資本が投下されたインフラという価値が埋め込まれているのです。
地方過疎化と対照的な大都市圏の不動産価値
日本全体を俯瞰すると、インフラ維持コストが賄えない自治体が増え、居住誘導区域(コンパクトシティ)への集約が進められています。これは残酷な言い方をすれば、人が住める場所とそうでない場所の選別が始まっているということです。
不動産投資においては「勝ち組エリア」と「負け組エリア」の二極化が極限まで進みます。大都市圏の好立地物件は、国や自治体が優先的にインフラを維持・更新するエリアに含まれる可能性が高く、資産価値が保全されやすいと言えます。逆に、人口希薄地域の不動産は、どれほど利回りが高くても、将来的にはインフラ放棄のリスクに晒されます。
5. ワンルームマンション「供給」における構造的な限界と希少性
多くの自治体で強化される「ワンルーム建築規制」の壁
不動産価格は「需要」と「供給」のバランスで決まります。ここまで需要について述べましたが、実はワンルーム投資の最大の強みは「供給の制約」にあります。
東京23区をはじめとする多くの自治体では、「ワンルームマンション規制条例」を制定しています。これは、単身者が増えることによるゴミ出しマナーの悪化や地域コミュニティの希薄化を懸念した近隣住民への配慮、および定住人口(ファミリー層)を増やしたいという行政の意図によるものです。
具体的には「最低専有面積を25平米以上にする」「一定戸数以上はファミリー向け住戸を混在させる」といった厳しい条件が課されます。25平米以上の部屋を作ろうとすると、価格が高くなりすぎたり、収益性が下がったりするため、デベロッパーは以前のように手軽にワンルームマンションを供給できなくなっています。 “
用地不足:好立地はホテル・オフィスとの争奪戦
都心の駅近という好立地は、マンション用地であると同時に、ホテルやオフィスビルにとっても魅力的な立地です。インバウンド需要の回復によりホテル開発が活発化し、オフィス回帰によってビル需要も堅調な昨今、用地取得競争は激化しています。
ホテルやオフィスの方が収益性が高いケースが多く、マンションデベロッパーが競り負けることが増えています。結果として、駅徒歩5分圏内などの超好立地に、新たにワンルームマンションが供給されるハードルは年々上がっています。既存の好立地物件は、それだけで「希少価値」を持つことになります。
建築コスト・人件費高騰による新築供給の抑制圧力
昨今のインフレ、円安による資材価格の高騰、そして建設業界の深刻な人手不足(2024年問題以降の労働規制強化)により、建築コストは過去最高水準で推移しています。
建築費が上がれば、当然新築マンションの販売価格も上げざるを得ません。しかし、投資用物件の場合、価格が上がりすぎると利回りが低下し、投資家が購入できなくなります。このジレンマにより、デベロッパーは供給を絞らざるを得ない状況にあります。供給量が抑制されれば、需給バランスは引き締まり、空室リスクの低下や家賃の上昇圧力につながります。
需給ギャップが生み出す家賃の下支え効果
需要(単身世帯)は増え続けているのに、供給(新築ワンルーム)は規制やコスト高で増えにくい。この「需給ギャップ」こそが、ワンルームマンション投資の未来を明るくする最大の構造的要因です。
モノが不足すれば価格が上がるのは経済の原則です。実際、東京都心部では中古ワンルームマンションの家賃相場がじわりと上昇しています。古くなっても家賃が下がりにくい、あるいは上がるという現象は、この需給バランスの歪みによって引き起こされています。
6. 学生・外国人・シニア…多様化する入居者属性とリスク分散
特定技能制度の拡大と外国人労働者の住宅確保ニーズ
労働人口減少を補うため、政府は「特定技能」などの在留資格を拡大し、外国人労働者の受け入れを積極的に進めています。彼らの多くは単身で来日し、都市部で働きます。
かつては外国人への賃貸を敬遠するオーナーもいましたが、現在は保証会社や外国人専門の管理サポートが充実しており、リスクは大幅に低減されています。真面目に働き、家賃滞納も少ない優良な外国人入居者は、今後の賃貸市場における重要な顧客層です。
増加する留学生数と慢性的な学生寮不足の現状
政府の留学生30万人計画(さらに40万人への拡大議論)などにより、外国人留学生の数は増加傾向にあります。しかし、大学が用意する学生寮は圧倒的に不足しています。結果として、多くの留学生は民間の賃貸住宅を利用することになります。
都内の日本語学校や専門学校、大学に通う留学生にとって、ワンルームマンションはプライバシーが守られ、安全性が高い住居として人気があります。
「所有から利用へ」アクティブシニアの都心住み替え需要
元気な高齢者(アクティブシニア)の間で、郊外の広い持ち家を売却し、都心の便利なマンションに住み替える動きがあります。「断捨離」をして身軽になり、病院やデパートに近い場所で暮らしたいというニーズです。
彼らは資産を持っているため家賃支払い能力が高く、安定した入居者となります。ワンルームや1LDKといったコンパクトな間取りは、高齢者にとっても管理がしやすく、バリアフリーの観点からも適しています。
法人契約需要の底堅さと社宅代行サービスの活用
企業の社宅ニーズも変化しています。自社で寮を保有・管理するコストを嫌い、一般の賃貸マンションを借り上げて社宅とする「借上げ社宅」が主流です。転勤者や新入社員のために、企業が法人契約でワンルームマンションを借りるケースは非常に多く、この需要は景気に左右されにくい安定性があります。
7. テレワーク定着後も揺るがない「職住近接」の価値
アフターコロナで見直された「都心回帰」の揺り戻し現象
コロナ禍において「テレワークができるなら、家賃の高い都心に住む必要はない」という議論が盛んに行われました。しかし、パンデミックが収束し、2026年の現在を見渡すと、極端な郊外移住ブームは落ち着き、むしろ都心回帰の揺り戻しが起きています。
完全リモートワークを実施している企業は一部に留まり、多くの企業は「週2〜3日出社」というハイブリッドワークを採用しています。週に数回でも出社が必要であれば、通勤時間は依然としてコストであり、職住近接のメリットは失われません。
単身者が重視するのは広さよりも「時間効率」と「利便性」
ファミリー層であれば、子供のために自然環境や広さを求めて郊外を選ぶ動機があります。しかし、忙しい単身ビジネスパーソンにとって、最も貴重な資源は「時間」です。
通勤時間を短縮し、その分を睡眠やスキルアップ、趣味の時間に充てる。深夜まで営業しているスーパーや飲食店が近くにある。こうした「時間効率」と「利便性」こそが、単身者が高い家賃を払ってでも都心に住む理由です。この価値観はテレワークが普及しても大きく変わることはありませんでした。
ハイブリッドワーク時代における主要駅へのアクセス重要性
ハイブリッドワーク時代においては、オフィスへのアクセスだけでなく、コワーキングスペースやクライアント先など、多方面への移動のしやすさが重視されます。複数の路線が乗り入れるターミナル駅へのアクセスが良い物件は、ビジネス拠点としての価値が高く、賃貸需要が途切れることはありません。
オフィス回帰の動きと都心賃貸需要の相関関係
米国のテック企業をはじめ、生産性向上やイノベーション創出のためにオフィス回帰を促す動きは世界的なトレンドです。日本の企業も同様に、対面コミュニケーションの重要性を再認識しています。オフィスに人が戻れば、その周辺の住宅需要も戻ります。都心のオフィス空室率の改善と連動して、ワンルームマンションの稼働率も高水準を維持しています。
8. 競合比較:アパート・ファミリー物件に対するワンルームの優位性
供給過多が懸念される郊外アパート経営との決定的違い
不動産投資には様々な種類がありますが、郊外の木造アパート投資は、土地があれば比較的容易に建築できるため、供給過多になりやすいリスクがあります。また、建物の劣化が早く、修繕費がかさむ一方で、家賃は築年数とともに下落しやすい傾向があります。
対して、都心・駅近・RC(鉄筋コンクリート)造のワンルームマンションは、前述の通り供給が制限されており、立地優位性が高いため資産価値が落ちにくいのが特徴です。
シェアハウスブームの収束とプライバシー重視への回帰
一時期ブームとなったシェアハウスですが、運営会社の破綻問題や、やはり他人との共同生活によるトラブルへの懸念から、需要は一巡しました。特に感染症リスクを経験したことで、バス・トイレ・キッチンが自分専用である「完全な個室」への欲求が再評価されています。プライバシーと衛生面での安心感において、ワンルームマンションはシェアハウスに対して圧倒的な優位性を持っています。
ファミリータイプと比較した退去時の原状回復コストと回転率
ファミリー向け物件は、一度入居すると長く住んでくれますが、退去時の原状回復費用(リフォーム代)が高額になりがちです。子供やペットによる汚損、広い面積のクロス張り替えなどで、数十万円〜百万円単位の出費になることもあります。
一方、ワンルームは面積が小さいため、クロスを全面張り替えても数万円〜十数万円程度で済みます。また、入居付け(次の入居者を見つけること)のスピードも速く、都心人気エリアであれば退去から1ヶ月以内に次の入居者が決まることも珍しくありません。この「流動性の高さ」は投資のリスクヘッジとして機能します。
景気変動に対する「居住用・小規模」物件の耐性
オフィスや店舗などの商業系不動産は、景気が悪くなるとすぐに退去や賃料減額が発生します。しかし、住居は生活の基盤であり、最後に解約されるものです。中でも家賃負担が軽いワンルームマンションは、不況時でも「家賃を払えなくて退去する」というケースが比較的少なく、最も安定したアセットクラス(資産の種類)と言われています。
9. インフレ時代における実物資産としての需要と価値
現金価値の目減りとインフレに連動する家賃収入
2020年代中盤以降、世界的なインフレ傾向が定着し、日本でも「現金の価値が目減りする」という感覚が一般的になりました。銀行に預けておくだけでは、実質的な資産価値は下がっていく時代です。
不動産は「インフレヘッジ資産」の代表格です。物価が上がれば、建物の評価額も上がり、遅れて家賃も上昇します。借入金(ローン)の額面は変わらないため、インフレが進むほど、実質的な借金負担は軽くなります。これは、現金や預金にはない、実物資産ならではのメリットです。
安定したキャッシュフローを生む「住」への支出の優先順位
インフレで生活費が上がったとしても、人は食事と住居を削ることは最後になります。衣食住の中でも「住」は毎月固定で支払われるため、企業の配当金のように業績で上下することがありません。この安定したキャッシュフローこそが、将来不安に対する強力な備えとなります。
年金不安を補完する私的年金としての機能
公的年金の支給開始年齢引き上げや受給額の実質減額が懸念される中、「自分年金」作りは必須の課題です。ローン完済後のワンルームマンションから得られる家賃収入は、まさに私的年金として機能します。
仮に月8万円の家賃収入があれば、国民年金に上乗せすることで、老後の生活水準を大きく引き上げることができます。しかも、現金を切り崩すのと違い、物件が存在する限り収入が続く(長生きリスクに対応できる)点が優れています。
資産価値(リセールバリュー)が維持されやすい物件の条件
インフレ時代に勝てる不動産とは、単に「不動産なら何でも良い」わけではありません。「誰かに高く貸せる」「誰かに高く売れる」物件でなければ、インフレの恩恵は受けられません。
その条件とは、これまで述べてきた「都心」「駅近」「単身需要」を満たす物件です。土地の価値が高い場所にあるマンションは、建物が古くなっても土地値としての価値が残るため、資産価値がゼロになることはありません。
10. 10年後、20年後を見据えたエリア選定と出口戦略
人口動態に左右されない「勝てる駅・路線」の見極め方
将来にわたって需要が尽きないエリアを選ぶには、行政区単位ではなく「駅力(えきりょく)」で見ることが重要です。 具体的には、以下の要素を持つ駅や路線が狙い目です。
- 複数路線利用可能: 事故などで1路線が止まっても代替手段がある。
- 都心直結: 東京駅、新宿駅、渋谷駅などの主要ターミナルまで30分以内。
- 再開発: 駅前の整備が進み、街の魅力が向上している。
- 大学・大企業の存在: 安定した賃貸需要の供給源がある。
例えば、山手線の内側や沿線、あるいは地下鉄との相互乗り入れが進む私鉄の急行停車駅などは、今後も底堅い需要が見込めます。 “
将来的な再開発計画と資産価値上昇の可能性
不動産投資の醍醐味の一つにキャピタルゲイン(売却益)があります。これを狙うには、街が変化するタイミングを捉えることが重要です。 大規模な再開発が予定されているエリア周辺のワンルームマンションを仕込んでおけば、街のブランド力向上とともに物件価格の上昇が期待できます。2020年代後半以降も、東京では品川エリアや湾岸エリア、新宿西口などで巨大プロジェクトが進行しています。こうした情報をいち早くキャッチし、エリア選定に組み込む視点が必要です。
いざという時に売れるか?流動性の確保と売却タイミング
不動産投資のゴールは「持ち続けること」だけではありません。「売却して現金化する」ことも重要な選択肢です(出口戦略)。 ワンルームマンションは、一棟アパートに比べて価格が手頃(数千万円単位)であるため、買い手の母数が多く、流動性が高いのが特徴です。投資用としてだけでなく、セカンドハウスや子供用として実需層に売れる可能性もあります。
売却のタイミングとしては、減価償却期間の終了時、大規模修繕の前、あるいは市場価格が高騰したタイミングなどがあります。流動性の高い物件を持っておくことは、人生の緊急時に「換金できる資産」を持つことと同義であり、心の安定にも繋がります。 “